“最期の時間”を支える現場の価値を数字で読み解く

本記事は、特養・老健・グループホーム・有料老人ホームなどで働く介護職、看護職、相談員、ケアマネジャー、管理者まで、介護にかかわるすべての人に向けています。制度の理解を深め、現場の実践に活かしたい方のための内容です。
看取り介護加算とは何か
看取り介護加算は、終末期にある入居者に対し、医療と介護が連携して計画的に支援した場合に評価される仕組みです。施設種別や区分により単位数は異なりますが、例として特養では死亡前30日間を段階的に評価する体系があり、死亡日を含む直近数日は1日あたり数百~1,000単位超といった高い評価が設定されることがあります(区分により差あり)。
仮に定員80名の特養で年間20名の看取りを実施し、平均して1人あたり合計5,000単位を算定した場合、**年間100,000単位(約100万円相当)**の規模になります(1単位10円換算の概算)。
重要なのは金額そのものではなく、体制整備と質の担保が前提である点です。単なる“最期の対応”では算定できません。
算定要件
算定のカギは、事前の同意・計画・連携です。
主なポイントは次の通りです。
- 医師の医学的判断(回復困難な状態の確認)
- 本人・家族への説明と同意
- 看取り介護計画の作成
- 24時間連絡体制の確保
- 多職種連携(看護・介護・相談員等)
例えば、事前カンファレンスを最低2回(開始時・状態変化時)実施し、議事録を保存する。夜間の急変に備え、オンコール体制を年間365日確保する。こうした具体策が求められます。
記録不備や同意書の欠落は返還リスクにつながるため、監査対策として月1回の書類点検を習慣化している施設もあります。
現場の役割
看取り期は、身体状況の変化が急速です。
例えば、経口摂取量が1日1,200kcal→600kcal以下へ低下、尿量の減少、ADLの急落など、客観指標の共有が不可欠です。
ここで重要なのが、
- バイタルの記録頻度(1日2回→状態により3~4回)
- 口腔ケアの実施回数(1日2回以上)
- 体位変換(2~3時間ごと)
といった具体的行動基準。
“丁寧に対応した”ではなく、何回・どの程度・どの変化があったかを示せるチームは、家族の納得度も高い傾向があります。実際、家族満足度アンケートで満足・やや満足が80%超を維持している施設は、説明回数や面談記録が明確です。
家族対応――不安を数値で支える
看取りは、家族の心理的負担が大きい場面です。
平均在所年数が3~5年の入居者であれば、家族との関係性も深い。
有効なのは、週1回以上の定期連絡と、状態変化時の即時報告。
例えば、
- 体温37.5℃以上が24時間続いた場合は連絡
- 経口摂取量が前週比50%未満で面談提案
- 苦痛スケール(NRS)7以上で医師へ相談
といった連絡基準の明確化です。
「いつ呼ばれるかわからない」不安を、「こうなったら連絡します」という合意に変えることが、信頼を生みます。
看取り介護加算が示す“施設の力”
看取りを年間10名以上安定して実施し、返還ゼロ、家族満足度80%超を維持している施設は、共通して次を徹底しています。
- 年間研修時間10時間以上(終末期ケア含む)
- 月1回の事例検討会
- 看護・介護の役割分担表の明文化
- 夜間連絡フローの可視化
- 職員のメンタルケア面談(年2回以上)
看取りは精神的負荷も大きい。バーンアウト予防として、振り返りカンファレンスを必ず実施する施設は離職率が低い傾向にあります(例:年間離職率10%未満)。
まとめ――“最期”を支える専門性を、自分たちの誇りに
看取り介護加算は、制度上の評価であると同時に、施設の理念と現場力を映す鏡です。
算定単位や体制整備は重要ですが、最終的に問われるのは、入居者と家族が「ここで良かった」と思える時間を提供できたかどうか。
介護にかかわるすべての人へ。
看取りは特別な仕事ではなく、日々のケアの延長線上にあります。
数値で整え、心で支える。
その両輪を回せる現場こそが、これからの時代に選ばれる施設です。
